自信モツの赤ワイン煮込み ~ 体験談を添えて

言えなかったことを書いて吐き出してみようと思う。
多分、少なくとも私には、良い内容だと思うから。

以前システムトラブルに見舞われた。
突然一部機能が使用不可になったのだ。
特にシステム改修、変更はおこなっていないにも拘らず。

重要な基幹システムであるため、各分野のエキスパートが集められた。
日本を代表するような企業、あるいは世界的に有名な企業の人たちだ。
私は特に何の専門でもなく、一人の責任者としてそこにいた。

非常にまずい状況であることはよくわかる。肌でわかる。
独特の空気が流れている。
状況を伝えプロフェッショナルの人たちに調査をお願いする。
原因不明なんで、現象を伝えるしかない。
調査範囲なんか限定できない。
具体的に調査方法なんて明示できやしない。
そんな状況だ。

なんにもしない訳にもいかないので、自分達でも分析する。
なんかできやしないかと、模索する。

そのうち各分野からの調査報告があがってくる。
「問題ない」と。

どう「問題ない」のか掘り下げてヒアリングする。
分析する。
俯瞰する。
差し出した両手に水のように情報は提供されるが、
みるみるこぼれ落ちる。
無力感にさいなまれる。
「どうしたらいいんだろう。」
次の手を考えなければいけない。
こんな優秀な人たちを待機させる訳にはいかない。
ああ。私はなんでこんなところになんでいるんだろう。
何の役にも立ちやしないのに。
クズだ。ゴミだ。
多分邪魔だ。
いや、バカにされるピエロなんだ。見せしめなんだ。



~~~   それでも立ち向かうしかない   ~~~



ふと、気付かされる。
もしかして今、
「このトラブルに一番詳しいのは私かもしれない」と。
「このトラブルに日本一、世界一、宇宙一詳しいのは私なんだ」と。

情報はすべて私を通るじゃないか。
私の上層には私ほどシステムに詳しい人間はいない。
やろうと思えば実働できるのは私だけだ。
私しかいないじゃないか、と。



ほとなくしてシステムトラブルは解決する。
偶然に偶然が重なって、あれとあれの関係がおかしくなったのだ。
残念ながら私は解決にはあまり寄与できなかったが。



自分の無力さ無能さに絶望する。
どうせ××なんだ、と思ってしまう。
○○な人たちになんとかしてもらえばいいと思ってしまう。
でも、そうじゃない。
そうじゃないんだ。

その事象に、人に、物に関わったのは私なんだ。
その時点で私が一番詳しいじゃないか。
過去の事例、マニュアル、規定、法令色々ある。
それらを踏まえて判断する必要がある。
誰が?
私しかいなんだ。
関連する情報に詳しい人はいても、「それ」に一番詳しいのは
私なんだ。
例え「それ」がどんなに些細なことでも。
「それ」は一見のお客さんかもしれないし、電話をかけてきた人でも、
机から転がった消しゴムでも、昨日書いたメモでもなんでもいい。
その時点で「それ」に一番通じているのは自分ではないか。
自信を持つべきだと思う。

しょうもない仕事、誰がやっても同じ結果の仕事。
本当にそうなのだろうか。
紙に書いてる一言一句、画面に表示されるデータの数々、作成途中のモノ、
同じものが2つとあるのだろうか。
訪れる客や現れる事象に全く同じものがあるといえるのだろうか。
そんな訳はない。
例えある切り口からは同じと見えても、同じものは2つとない。
私が私であるように。

どんなことでも一期一会なのだと思う。
そして出会ったからには、それに一番詳しいのだと思う。
自信を持って対応していいと思う。
一番詳しいのだから。