特別な日

あー疲れた。今日も疲れたな~。
会社やめたいなー。もういやだなー。
やってらんないなー。
もう、ヒキコモリタイ。
うー、疲れたー

定番のうめき声をあげながら、スーツを脱ぎハンガーに掛けます。
下着姿になったところでそのまま風呂場へ赴き、シャワーを浴びる。
うー。だいぶ気持も落ち着いてきた。
シャワーを浴びると疲れ、ストレスの1,2割は体の汚れとともに
流れ落ちていくよう。
うーちょっと爽快。
さっぱりしたところで、おもむろにPCの電源を入れます。
起動までの時間で、晩御飯の準備を。今日は近所のスーパーのかつ丼弁当。
タイムセールで安くなっていて30%引きで購入しました。
かつ丼をほおばりながら、ログイン。
まずはいつものネットゲームを起動します。起動しつつwebを立ち上げ
いつものサイトをチェック。次に自分のブログのアクセス数などのチェックを
おこないます。

ブログではダメな自分を励ます内容の記述を続けています。
さらにそれを読んだ他の人が、何かの励みになったり、ためになったり
すればいいなあと思って書き続けています。
特に、ダメな自分が落ちていきそうな所に落ちてしまった人がいるならば
これを読んで、あわよくば戻ってこれないかと、
戻ってくる手助けにならないかと、日々ブログを綴っています。

そうこうしているうちにネットゲームが立ち上がります。
ログインしてゲーム上の「フレンド」がいないか確認します。
また「フレンド」からのメッセージが自分の掲示板に
書き込まれていないか確認します。

今日もメッセージなしかー。箸を置いて冷蔵庫からビールを取ってきます。
カツをあてにビールを一杯!
くああぁぁーーーー!
この一杯のために、働いているといっても過言ではない。
労働の後の、心に曇りなき一杯。クリアな味。
スカッとするな~
いやなことなんか忘れっちまおう
などと思いながら、ちびちび飲み進めます。

メッセージもないため、ネットゲームはちょっとおいといて
ネットでニュースの確認。
今日も太郎がろくでもないこと言ってるな~。日本は弱いな~。
などと思いながら飲んでいると、ビールもなくなりました。

時間はPM11:00。一般的には寝るには早いですが、ロングスリーパー
私はもう寝る時間です。ビールのせいもありますが。
ネットゲームをログアウトしようとすると、なにかメッセージが書き込まれ
ています。
え?
まさにリアルタイムでの書き込みです。
書き込んでいる人の名前は「LM」。見たことのない名前です。
なにやら私のブログのことを、、、!?
どうしてこの「LM」とやらが私のブログのことを知っているんだ?
なんでこのアカウント、ログインIDがブログと関連しているとわかるんだ?
総毛立ちながらも、画面から目が離せません。
心の中で何かが崩れていくようです。
すごい勢いでメッセージが書き込まれていきます。
どうやら「LM」はゲーム上で一緒に遊んだことがあり、また私のブログを
読んで気に入ったらしいです。
それで、、、
「・・・そこに行きたい。」
何を書いているのだろう?もう意味が分からない。
「LM」から画像が投稿されました。
確認すると、なんと私のマンションのマップです。。。
これは先日友人に自宅の場所を教えるためにマップを画像として
デスクトップに保存していたものと同じ。
なんてことだ
体は凍りついたように態勢を変えることもできません。
立ち上がれば、倒れるかもしれません。いや、立ち上がれないでしょう。
「LM」は私の住所を知っている。
奴は、来るかもしれない。
いや、待てよ。マンションの場所が分かっても部屋番号までは分からないはず。
あの画像しか持っていないようだし。
いや、画像をもっているということ、手に入れられるということは。
絶対ここに来るに違いない。
這うようににて玄関まで辿り着き、鍵を確認します。
しかし、やっかいなことになったもんだ。
これからこんな心配ごとを抱えて生きていくのか。ただでさえ目一杯なのに。
!ドア越しに何かの気配を感じます。
なにかが、いる
ドアにへばりつくようにして、覗き穴をちょっとためらいながら、覗きます。
目がしょぼついて、よく見えません。眼やにのせいかもしれません。
何度も何度も見直しますが、ぼやーっとして良く見えません。
でも、ぼやけているものの、人はいなさそうです。
やっぱり、気のせいでしょう。
そんなに早くこれるはずがない。
PCの前に戻り、メッセージを確認すると、大量に書き込まれたはずのあの
メッセージがすべて消えています。
こんなことが、できるのか
もう声もでません。

PCをシャットダウンします。
もう、寝てしまおう。というか、横になろう。
とても起きていられない。
しかし、やっかいなことになったもんだ。
こんなことなら、ブログなんか、書くんじゃなかった。
部屋の電気を消し、廊下にでると、玄関のドアが視界に入ります。
え?
鍵が閉まっているはずのドアが少しずつ開きます。
外の通路の明かりが漏れてきます。
まさか、そんな
そろそろと、そいつは入ってきます。
そいつは、


体の大きさは子供くらい。やたらと老けた男の小学生の様。
しかしその歪んだ表情からは30歳以上だろうと思わせる。

なぜか私は安心する。
ああ、こいつか。この人か。
わかるよ。

そいつは私の予想通りの、あるいはすでに伝わっている言葉を
口にした。
「・・・癒されに来た。」

もうそれは不要なくらい、十分な言葉だった。
私は優しく抱きしめる。

恍惚の中で、私は思う。
これでよかったと。これを待っていたのだと。

こいつは私そのものだ。