知恵袋受験(追記)竜頭蛇尾

大学入試の問題がインターネットに投稿されたとかいうのは、
海老蔵が深夜の六本木で暴れて重傷を負ったということと、
同じくらい関心が、ない。
 
なぜこんなにカンニングが話題になるのか。
 
カンニングの方法が、インターネットを使用したものではなく、
古風なカンニングペーパー作成の形態であれば問題にはならなかった。
また
インターネットを利用したカンニングが大学受験ではなく、
学内の定期試験でおこなわれたのであれば問題にはならなかった。
そして
インターネットを使用したからこそ、証拠のアベイラビリティは向上し、
「正義」の鉄槌を振り上げて誰を叩こうかと探している人に、検索されて、ヒットした。
 
それだけのことだろう。
 
カンニングというのは誰もが試みることではないだろうか。
私もカンニングペーパーを試作したことがある。
その紙は見つからないように小さい必要がある。
その限られた紙面に「テストに出る」、重要でかつなかなか覚えられなさそうな情報を吟味、厳選し、
思い出すきっかけを作る形で省略し、編集した後に、カンペに読みやすく清書する。
例えば「05T8バ撃~HTSNNT」は「19(05)年に東(T)郷平八(8)郎が(バ)ルチック艦隊を(撃)破
 本(H)日天(T)気晴(S)朗な(N)れども波(N)高(T)し」となる。
 
「そのとおり」
 
そんなことをしている間に、カンペの内容はすべて頭に入っている。
それを実際使うまでもないことは言うまでもなく、作成に要した時間の内、情報の編集に要した
時間はすなわち「勉強」になり、紙片の作成、清書の時間は「気分転換」となった。
 
カンペではなかった。
大学を受験したことのある人なら分かるだろうが、大学受験に必要なカンペは
そもそも作るのがイヤになるくらいのボリュームになり、当然それは
検索するのに相当の訓練が必要なものになるだろう。
 
カンペではなった。
外部の誰かに協力を依頼する形でのカンニングだった。
その準備には「勉強」になる時間は含まれてはいない。
 
興味はないのだが、ニュースを見ていたら、メガネに仕込まれたマイクロカメラによって
自分の視界を無線で外部に送信できる装置があることを知った。
また受信用に消しゴムや腕時計にメールのディスプレイを仕込んだり、、、
あ。今思いついたが、骨伝導を使用した音声受信というのもあるだろう。
いずれにせよ、そのような送受信装置を駆使し、受験生は「受験対策業者」と共謀して
カンニングを成立させるのだと思っていた。
複数の大学が不正の現場として挙げられていたため、複数の受験生が同時に異なる
受験会場から問題を送信し、中継され、受験対策センターで受信され、そこで回答を
作成するにあたり「Yahoo!知恵袋」を利用し、回答を受験生に伝達しているのだと思った。
知恵袋のアカウントも1つのようだったのでそう見えた。
 
が、信じがたいが「単独犯」らしい。
驚きの白さ。
なんということでしょう。
どうでもいいことではあるのだが。
 
彼は受験中に携帯電話に問題の文字を打ち込んでいたのだ。
そして、来るかどうか分からない返事を待ち、返事が来たところで、正しいのかどうか分からない
(自分の回答よりはマシだと思われる)回答を確認し、テスト用紙に転記したのだ。
 
一体どのようなリスク管理をしているのだろう。
もしかすると、彼は事前に知恵袋をテストしていたようなので、知恵袋ではタイムリーに正確な回答を
得られる確率が100%に近いのであろうか。
いや、例えそうだとして、ケータイで問題文を手打ちする?
もしそれが可能だったなら、大学の試験監督は彼の言うとおり、チェックに問題があるのではないか。
いや。袖の中やポケットの中にケータイを隠し、その上からブラインドタッチする能力を
身に付けていたとしたら?
いずれにせよ再現してほしいものだ。
再現してほしい?
興味が無いはずではなかったか。
 
もうやめた。
 
今回はあえて興味が無いトレンディーな話題に触れてみた。
書き進むにつれて、興味が無いことについて、結構書けるんだなあ、と驚く。
それはつまり、どれだけ興味が無い事柄でもテレビ、新聞、インターネットを通して
「もう、イヤ!」
というほど本件について情報を見聞きさせられているからだろう。
「させられている」?
「知りたい」という情報と「知りたくない」情報に本質的には区切りはなく、
玉石混交というよりは混然一体となっている。
「知りたくない」情報は音楽に混じるノイズのようなもので、一旦ノイズが気になりだすと、
音楽をそっちのけでノイズだけが耳に入ってくるのはよくあることだ。
そもそも知りたいことと知りたくないことが一体のなのであれば、
本来的に知りたい、知りたくないことというのは存在しないという見方もできる。
知りたくないことでも、その本質を知ることにより、知りたい情報に変わりうるだろうし。
 
そういえば、書いていて本件について知りたいことが見つかっていた。
「どうやってケータイに入力したか」だ。
もしかして専用の入力用デバイスを開発なんかしていたら?
くだらない、さもしい興味と見えるだろうが、私にとってはそこが知りたいか、知りたくないか
分かれるポイントである。
そしてそんなポイントがあること自体、期待しているのだと思う。
これだけ有名になったアイス好きが食べるアイスは相当にうまいのだろうと。
 
(追記)
その後
 
手口が明白になった。
左手で入力していたのだと。
件のアイスはホームランバー程度だった。※勿論味が悪いという意味ではありません。
 
もう一度書きたい。
驚きの白さ!
 
所詮は高校生というか、勉強ができても知恵があるわけではないのだな。
その発想すらネットから頂戴し、何の工夫も努力も洗練もない。
単独犯でありながら、オリジナリティは何もない単なる実行犯だ。
突き抜けているのは、子供のような天真爛漫さからくる、無謀な実行力だろう。
カンニング程度で済んでよかった。
 
こんなどうしようもない行為を試験官は見つけてあげるべきだった。
かわいそうじゃないか。
改善されるべきだ。
その意味で彼の行為が公のモノとなったことは無駄ではないと言えるのではないか。
 
そして彼はそっとしておいてあげて欲しい。
もうこれ以上ないほどの制裁は受けている。
なんなら早稲田大学に行ける形での決着であったとしても、それでも彼は救われないほど。
 
是非どこかの大学に入学できること、そしてメディアは放置することを望む。
真っ白な彼には教育が必要だ。
例えそれがもっとマシなカンニング方法の開発につながったとしても。